住宅は大きな買い物だ。特にいくつかの都市においてはその価格は高騰を続けている。
英国ロンドンでは住宅を購入するためには、年間で14万ポンド(約1,900万円)を稼ぐ必要があると言われるほどである。
その背景にはロンドン地域では国内の移住者や海外からの移民の増加などで住宅不足が深刻化していることがあげられるが、極端な住宅価格の上昇により、若い世代の多くに持ち家購入がままならない事態が生じており、購入資金を十分貯めることができず賃貸住宅に住まざるを得ない 40歳代未満の若い世代、いわゆる賃貸世代(Generation Rent)の増加が大きな社会問題となっているのだ。
そもそも、日本の市場とは異なり、英国では石づくりが中心で住宅寿命が長いうえ、こまめな修繕により買い替え時にも資産価値は保たれ、むしろ購入時よりも上がっていることのほうが多いと言われる。このため、低・中所得層にとって持ち家購入はproperty ladderと言われ、小さな住居を購入・売却を繰り返すことで、富の蓄積を目指すことが一般的だ。
現在の金利水準は超低金利で住宅ローンを組むうえでは好条件だが、住宅価格は賃金の伸びを上回るペースで上昇しているうえ、ロンドンなど都市部を中心に賃貸料も同様に急伸している。
月間賃貸料はこれまで所得の3分の1とされてきた目安を大きく上回り、ロンドンでは平均賃金の49%に相当するという極端な調査結果すらあり、住宅ローンを組むうえで重視される頭金を貯めることが非常に難しくなってきている。
既にマイホームを所有している世帯にとって右肩上がりの住宅価格は嬉しい限りだが、持たざる者にとっては悩みの種となっている。
英国政府もこの社会問題を解決しようと様々な施策を打ち出している。住宅購入者を増やすことが主目的だが、具体的には住宅ローンを活用して入り口のハードルを下げるというものだ。
そんな中、AIを活用した住宅ローンアドバイザー、Habitoというサービスがある。
住宅ローン専用のロボアドバイザー「Habito」
Habitoは、住宅ローン専用のロボアドバイザーだ。
「デジタル・モーゲージ・アドバイザー(DMA)」と呼ばれるAI(人工知能)を活用したシステムを活用すると、ユーザーは24時間365日、自宅にいながら住宅ローンの見積もりや相談をすることが可能になる。
まず、申請者の財務状況を照会し、申請者の給与、個人生活および雇用に関する質問をチャットボットが行う。
この15分程度のチャットにより、ボットは与えられたすべてのデータを照合し、常に最新のものに更新された住宅ローン金利をもとに、月々の返済額の算出や商品の紹介などをしてくれる。何百という商品の中から、利用者にとって最適なものを選びだしてくれる優れものだ。
正しい商品を選択することで、消費者は年間何千ポンド(約135万円以上)と節約することが期待できる。
特に様々な住宅ローン商品があふれかえっている英国では、最適な商品を探しだすことに困惑する消費者が多いという。
開発にあたり、「消費者が実際に何を求めているか」という点を分析するために、Habitoは何百件というインタビューを実施。
その結果、「会話を交わす雰囲気の中で、最適な商品を素早く見つけてくれるツール」への需要が高いことが判明した。相談の予約待ちなどもなく、思い立ったらすぐに無料で利用できる。Habitoは住宅ローン産業の常識を覆すことを企図している。
今後、よりお得な住宅ローンへの借り換えサービス紹介など、さらなる機能の追加を予定している。
HabitoのCEOで創業者のDaniel Hegartyは次のように述べている。
「私たちのデジタル住宅ローンアドバイザーは、住宅ローンのアドバイスを消費者が最も必要としている方法で利用できるようにすることが大きな目的です。
この技術の利点は、必ずしも最良の取引をお勧めできない、住宅ローンのブローカー(人)に時間を費やすより、システムを介してオンラインで住宅ローンを申請することにあります。
人間のアドバイザーが把握できる少数のものとは対照的に、数百の製品を照会します。
これらのシステムは、人為的ミスやプロセスによる偏りを排除するすることが可能です。ゆくゆくは完全に自動化された住宅ローン承認への道を開く可能性があると考えています。」