米国を中心にざわついているチャットボットだが、実はその市場を最初に創出したのは、MicrosoftでもFacebookでもない。
それでは誰なのかというと、それは中国の大手IT企業テンセントだ。彼らが開発した Wechatというアプリが最も進んだbotプラットフォームであろうというのが一般的な見解となっている。
中国国内ではものすごい盛り上がりを見せ、近未来的な形を取っているというWechatだが、具体的にはどのようなサービスプラットフォームとなっているのか。
まずWechatの大きな特徴として、公式アカウントの存在がある。
日本のLineなどでもそういったアカウントは見かけるが、ここで違うのは、自然言語での対話を通していろいろな動作が行える、つまりチャットボットが公式アカウントの役割を担っているという点だ。
中国では、「Webサイトを作るくらいなら、チャットボットを作れ」と言われてしまうほど、その存在が便利で必要不可欠なものになっているということなのかもしれない。
その公式アカウントについてもう少し掘り下げてみると、2タイプに分けることができるらしい。
①販促や商品の広告宣伝など、Promotionの分野を担うもの
②実際に消費者の求める行動を実行しサポートする、Serviceの分野を担うもの
ユーザビリティにこだわった末のシンプルさ
自然言語で機械と対話できるというのがチャットボットのそもそもの特徴ではあるが、チャットボットが大きく発展しているWechatでは、その扱いやすさに非常に重きをおいている。
つまり、いくら対話ができるからといって、なんでもかんでも対話形式でやりとりができるのが最適解ではないということだ。
その一例として、短いコマンドを動作のトリガーとしていること、が挙げられる。
例えば、Promotion向けのbotでは、
・"contact"→使用中のスマホに格納されているコンタクト情報を引き出し提示する
・"slide 42"→42番めのスライドを表示してくれる
などなど、コマンドに対応しているものも多い。
Botへの指示内容を、毎回すべてテキストで打つのは場合によっては面倒なものだ。
そこで使用頻度の高いものを扱いやすいコマンドとしてボットが受け取れるようにしてしまおうというのがこの仕様である。
一方、Service向けのbotでは、消費者が比較的細かい要望を持っていることが多いため、様々な情報を盛り込んだ一文を解析して意図を読み取ることができることがbotには求められているという。
これぞ人工知能?!Microsoft発チャットボット"Xiao ice"
それではいわゆる世間一般の人々が考えるような人工知能というものは存在するのか?
それに非常に近いと言えるものの1つが、Microsoft社が開発した"Xiao Ice"だろう。
既に4,000万人が一度はこのボットと対話していて、その精度を裏付ける驚異的な事実として、25%ものユーザーが彼女に"I love you"と発言しているというものがある。
実際はインターネット上の膨大なデータから引用した文章を、ユーザーの発言に返すだけの存在であるにも関わらずである。
ただ業務をこなしてくれるボットだけではなく、こういったエンタメ要素のあるボットも間違いなく需要としてはあるだろう。
まとめ
上記の通り、中国ではWechatが既にチャットボットのエコシステムを作り出すことにほぼ成功している。
非常に先進的な事例ではあるが、昨今の自然言語処理や機械学習の分野での発展を考えれば、この流れは止まらないだろう。
スマホ普及の歴史は我々に、加速度的に発展する未来を教えてくれる。
その中の1要素として、チャットボットが活躍している可能性は極めて高い。Wechatの教えてくれるchatbot至上の未来からはこれからも目が離せないだろう。